その光は魔性の輝き
2001/06/10
 最近M:tGをやっている人なら誰もが知っているだろう。Foil card - 通称キラカードのことである。このキラカードというのは非常にたちが悪い。ブースター1Boxには36Pack入っているので15*36=540。公称では1:100の確率で封入らしいから大体1Boxから5〜6枚出てくるわけで、実際のところ大体そんなもんである。スターターの場合は枚数が多いので(1Boxで900枚)出てくる枚数も多い。だがしかし!そのレアリティの構成も通常のブースターとさほど変わらないのが問題である。通常、1Pack中のレアリティはR:U:Cで1:3:11。半分にしてみると0.5:1.5:5.5。半分にすると7.5なので、1Box中のキラ枚数に非常に近くなる。これが何を意味するか?回りくどい書き方をしたが、1Box開けてもキラレアが出る確率はやく半分ということなのだ。1Box剥いたときのキラの分布はおよそR:U:Cが1:2:4から0:2:3である。これはひどい。基本的にキラレアというのは40〜50パックに1枚(特に根拠はないが)程度しか存在しないと考えて良いである。

 まぁ、スポーツトレーディングカードとかを買ったことのある人なら周知の事実だと思うが、ジャージカードとかになるとすさまじく確率が低いので(まぁ5Boxに1枚とかで当たり前)それに近い感覚がある。なぜなら、いくら1Boxでほぼ1枚が期待できると言っても、レアの種類なんて44枚(大型なら110枚)もあるんですから求めるレアが光っている確率なんて相当なもんだったりするわけだ。

 で、Urza'sLegacy以来M:tGに雷鳴のごとく現れたキラカードなのだが、思ったほど評価は高くない。基本的に、ゲームに使うカードなんだからそんなプレミアなんていらねーよってのが基本なのだろう。高額レアといっても大体$10.00程度なのだが、それがキラだとしてもせいぜい$40.00-くらい。なんとわずかに4倍である。コモンにいたっては\100-くらいで投げ売りされているものもおかしくない。比較として、サッカーカードの例を出してみよう。大体のスポーツカードではそうなのだが、基本的にレギュラーカードとインサートカードで構成されていると思ってもらって良い。レギュラーカードってのが基本的にコモンで、インサートカードってのがアンコモンだ。インサートカードってのは大体何種類もあって、ちょっと箔押しなどをしたものやレギュラーカードに装飾を加えた程度やチームカードなど、大体1:1〜1:40程度で収まる。で、それを超越するスーパーインサートカード(そんな呼び方はない。あくまでインサートカードの1種)として、ジャージカードやオートグラフ(直筆サイン)カードがあるわけだ。ここらへんになってくると、前述の通り1:40(1Boxに1枚程度ね)〜1:∞となってしまう。そんなインサートカードは、1:40程度でも\10,000-を超えることもある(選手によるけど)し、ジャージカードなどとなったらと\50,000-とかまであり得るのだ(サッカーカードって日本が一番盛んなのよね)。

 さて、ここで考えてみよう。アポカリプスも出たことだし、対抗色ダメランを例としてみる。対抗色ダメランは5種類あり、アポカリプスのレア種類は44枚である。まぁレアがダメランの確率は1/9というところだろう。よーするに、ダメランのキラレアを引くためには単純確率で9Boxは必要(まぁ全部のBoxからキラレアが出るとは限らないから10Box以上は必要だね)ということなのである。おお、ジャージカードクラスに全然負けてないぞ。コモンのキラだって1Boxから4〜5枚出たとしても、1:7くらいはある計算だ。中堅のインサートカードと遜色ない。

 まぁここまで読んでくれている人にはその理由も察しがついていると思う。いくらキラと言っても、そのセットの全種類分あるので、誰も欲しがらないようなカードが存在するのがM:tGのキラレアなのだ。一方、スポーツカードのインサートなんてのは基本的に人気選手しか対象とならない。インサートになった時点でみんな欲しがるんだよね。つーわけで、他の誰も欲しがらないキラカードの価格低迷に引っ張られる形で人気キラカードの値段も落ち着いているわけだ。

 さらに、キラを欲しがる人も少ないという問題がある。M:tGは、通常使うレアでさえもトレードしなければなかなか揃わないというカードゲームであるから、いくら高額のキラレアでもそれを弾にして欲しい通常レアを手に入れるというのが普通の人だ。基本的に高額レアがキラだったとしても、同じく通常の高額レアとトレードしようと思ったらせいぜい3〜4枚が関の山。前述の値段を比較してもらえればよくわかると思う。いくら光っていてもそれがゲームに有用なカードに変わるのであれば、もちろんそちらの方が良いだろう。前述したとおり、大体ゲームに使うカードにプレミアなんていらねーよということだ。自分もそうだった。

 しかし、状況は人を変えるとは良くいったものだ。社会人ともなれば金はそれなりにある。親に養ってもらっているわけでもないし、独身貴族というくらいなので、趣味に何万円もつぎ込んだとしても全然普通である。まぁ車やバイクだのゴルフ、このページを見ている人ならパソコンなどにお金を使うことを考えれば解るだろう「先月はアルミホイール買っちゃったよ〜まぁ安いやつなんだけどね」とか「また新しいグラフィックボードが気になってさぁ、結局マザーも新しくしちゃったよ」なんていう人の事を考えれば、例えそれが毎月であったとしても趣味につぎ込むお金というもの量の限界というものがわかるというものだ。その程度ならせいぜい「はまってるね〜でも、将来のために貯金も少しはした方がええんちゃう?」くらいだろう。言う側だって「まぁ熱心な趣味ならそのくらいの金は使うか」程度なのである。だが、キラカードというのはM:tGの話である。M:tGもゲームであるからして、主な対象年齢というのは低い。ゲームってのは基本的に全年齢を対象とするものであるが、主なターゲットはせいぜい中高生だ。あなたがM:tGを始めた時(いきなりトーナメントとかではなく、友人達数人と)の事を思い出して欲しい。1パック1パックを開ける度にドキドキしたあの瞬間を。そう、1日の昼飯代を削ってまで開けたあの1パックへの期待感。おお!これはどんなカードなのだろう?何々・・・「対象の呪文か対象のパーマネント1つの色は、白になる。」なんか意味あるのかなぁ、この鳩(^^;;。それが今となっては情報も普及し、発売前に全カードリストが解ってしまう。当然の事ながらパックを開ける時には、そんなドキドキ感など微塵も感じない。「おっ、Rageだ〜やったね」くらいなもんだ。

 そして、大人買いはそのような僅かな楽しみも奪う。パック開封から色別レアリティ別の整理など、ほとんどただの作業である。淡々と剥いて淡々と分類する。最低でもアンコモンは4枚コンプして、さらに余るというような買い方をしているのだからそれも当然だ。キラカードというのはそんな大人達に差し向けられた一筋の光明であるといえよう。まず、パックを開けて、光っているのを確かめる。ブースターであれば、まずコモンを1枚1枚剥がす、1・2・3・・・9・10・11!!!第1段階クリアである。次はアンコモン、1・2!!!!そこにアンコモンがあれば興奮は最高潮。Invasionのような基本地形が存在するセットで無ければキラレア確定だったりする。そして、そこからカードをずらして行くときのドキドキ感といったらもう・・・・


 長々と、キラカードの貴重さを説明したのは、キラカードって思っているよりシングルでは安いということではなく、それだけ開封時のドキドキ感を高めてくれるくらいだということなのだ。現行パック開封もキラの存在でドキドキ感を得ることができる。もっとも、キラじゃなかったら全然ダメなんだよね。モンスターハウスでリーチはかかったけど、かかった瞬間に真ん中がまるで的はずれな位置だったのが見えてしまったようなもんだ。開けた瞬間で興ざめ。

 そして、開けたらドキドキすることが解っているパック・・・・それこそがβ版・・・・その魔性の誘惑に負けないとは言い切れない今日この頃。